能ワールド

ある若い能楽者と飲んだ。

「能は、世界で初めてのUNESCOの無形文化遺産に登録されたものなんだよ」とうれしそうに語る反面、「能は今も生きている芸術だから、『遺産』と呼ばれることには抵抗がある」とも語る、能を愛する熱い人だった。

伝統芸能なんておじいちゃんたちが型を守って、地道にやっているような短絡的なイメージを持っていた僕にとって、彼の話は新鮮で刺激的だった。なんでも能は非常に即興性が高く、演じる人たちの緊張感を大切にするため、リハーサルをほとんどやらないらしい。舞台はシテ方ワキ方と呼ばれる役者、囃子方と呼ばれる楽器の演奏者によって構成されるのだが、役者と演奏者が一緒に練習することはなく、本番で初めて一緒にやるのだと言う。意外に大胆。能の演奏・演技はゆっくりした雰囲気の中進んでいくのだが、各人が即興性を競いあっているため、内心は役者・演奏者同士のぶつかり合いであるらしい。

こんな話を聞いていたら、能が妙に面白そうに聞こえてきた。幸い12/2には舞台を観に行く。

ジャンルはなんであれ、真剣に生きている人と会うのは本当に貴重だと再確認。